本当文は勢いだと思います。思いついたのを書いてるので…。
移動中の学者は暇してるそうです。
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布越しに暑さが伝わってくる。
日はもう高く昇っているのだろう。
天幕の中に居るというのにこの暑さだ、出発にはもう少しかかるだろう。
「バラカート?珍しいですね、昼寝ですか?」
入り口の布が捲られて見慣れた顔が覗いた。
横になって本を顔に乗せていたのだから恐らくそう見えたのだろう、その声は言葉通り意外そうであった。
寝ていないことを示すように軽く手を振り、鈍り始めた身体を起こす。
起こす途中で横に積んだ本が崩れたが、いつものことなので放っておく。
「……寝ちゃいねぇよ」
「そうですか、なら少し詰めてくれませんかね、おれが入れませんよ」
「半分はお前の荷物だ、自分でどうにかしろ」
冷たいですねぇ、とぼやきながらもスウは荷物をどかし自分の場所を確保する。
それでも天幕の中は大分散らかっている。いや、これでも今は移動中なのだからまだましと言うべきなのだ。
どちらか一人が少しは気を使えばいいのだが、この天幕を共有する二人には双方ともその意識が欠け気味である。
「出発は日が傾いてきたらだそうですよ、当番の護衛以外は天幕で休むようにとのことです」
「だろうな…」
外は恐らく雲一つない快晴だ。
その状態で砂漠など渡れば倒れるのは一人や二人では済まないだろう。
更に此処では盗賊が集中している。昼には現れないだろうが、隊商内に病人など居ればそれだけで足並みが大分鈍る。
そう考えれば用心して天幕で休めと判断されるのも頷ける。
「………水も持つのかわからねぇな…このペースだと…」
「あんたの植物は分かりませんがね。………それにしても暇そうですね」
その言葉に若干複雑そうな顔をしながらも、一つ暇だと返した。
「この調子だと次の町まで同じような感じだろ…折角塩湖に近くなるってのに調査も出来やしねぇ…」
「砂ぐらい採取していけばいいじゃないですか、あんたのルフなら調べられるでしょう?」
「…ニーニエルなら無理だ、あいつは『地面』じゃねぇと」
バラカートのルフ、ニーニエルは『地面』に根を張ることでその特徴を知ることが出来る。
言えば根を張ることが出来なければ知ることが出来ないのだ。
また、根を張る際に根とバラカートの身体を固定してしまう為、いざというときに対応がきかない。
この地帯との相性は恐らく最悪だろう。
「そういうもんなんですかね、おれにはいまひとつですが…護衛でも雇ったらどうです?」
「護衛か…カードでもダシにしてウルドバにでも聞いてみるか?」
はん、と鼻で笑いながら気難しげな顔を思い出す。
ああ見えてかなりの負けず嫌いだ、言葉次第では簡単に乗ってくれるだろう。
代わりに痛い目にあわされる可能性も否定出来なくはないのだが。
スウも同じ顔を想像したのだろう、けらけらと小気味良く笑った。
「まぁこの辺は誰も同じようなもんですって。おれら商人なんていつもの顔しか商いも出来ませんしね、それにあんたは前の町で随分楽しんだじゃないですか」
「楽しんだって言うかはどうか知らねぇが…お前は随分暇してたみてぇだな」
「そうですよ、全然相手してくれなかったんですから。折角ですから移動中構ってくださいよ」
そう言うなりスウは自分の荷物に埋もれるように顔を乗せた。
それに合わせるように天幕の布が何かに叩かれるように数回音を立てる。出発するという伝えだ。
学者は一つ息をつき、商人は面倒くさそうに身を起こす。
あと数分もすれば隊商は動き出す。日が完全に落ち、盗賊が活動する時間までに比較的安全と呼べる場所まで行かなければならない。
その為にはこの荷物を片付け出発出来る状態にしなければならない。
もっとも、すぐに済むはずがないのだが。
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スウと名前だけですがウルドバさんお借りしました。