日常小ネタ

Side:C
【からかい二つ】

（本編続きから）

「見て下さい！ほら、綺麗ですよ」
桃色の髪を大きく揺らしながら、シーリーンは両手に乗せたそれを見せた。
精巧な細工が施され、細かな鎖が重なる度にしゃらりと音が鳴る。中央に嵌められた柔らかい翠の石が美しい。
彼女に促され、クライズクラウは覗き込みその細工に感心したように声を上げる。
「首飾りかぃ？見事なもんじゃねぇか」

二人が立ち寄ったのはオークションが開かれる広場から少し離れた市場の露店である。
オークションに出されるような高級品は無縁と、こうして露店を眺めては目に止まったものにあれやこれやと話しているのだ。
恰幅の良いこの商人もそのような客の相手には慣れているのだろう、追い払うこともせずこの石は孔雀石だと教えてくれた。
「綺麗な色してるだろ？他の孔雀石と比べてもこいつの色は飛び切りさ。
それに細工の方も見てくんな。細工師が腕によりをかけた一品でね、この朱の天蓋でも中々お目にかかれないシロモンだ」
確かに店主が言うように見事な細工だ。熱心に聞き入るシーリーンの胸元に収まればきっと美しく映えるだろう。
だが、それだけの一品にはそれに似合う値段がつけられる。
「………銀貨5枚、なんですね…」
シーリーンは残念そうに声色を落とす。
銀貨5枚となればそう軽々しく出せる金額でもない。まして二人ともさして貯蓄していないのだから尚更のことだ。

それでも商人は当たり前の金額と言うように首飾りを示す。
「これだけの品を銀貨5枚ってのはお得ってもんさ。どうだいお嬢ちゃん、そっちの彼氏に買ってもらったらどうだ」
その言葉にシーリーンではなく、横で見ていたクライズクラウが笑い出した。
「いいじゃねぇかリーン、黒の旦那にいっちょ強請ってみたらどうだぃ？」
途端にシーリーンの動きが慌しくなる。その手に持った首飾りを放り出しそうな勢いだ。
「駄目です！これ以上アムスィさんにご迷惑かけるなんて…！」
「お、いいねぇ、彼氏ってとこ否定しねぇってのは」
「い、意地悪しないで下さい！」
顔を真っ赤にし、どこか必死なその様子が可愛らしく、クライズクラウはまた笑ってしまう。
対照的に商人はそのやり取りを不思議そうな顔をして聞いていた。

「…なんだ、恋人ってわけじゃないのか」
「おぅ、人のもんは取れねぇぜ」
シーリーンが更に顔を赤くさせ、なにやら叩いてくるがクライズクラウは特に気にしないこととした。
ふと思い立ち、商人にこう話題を振る。
「ちなみにどんな関係に見える？当ったら一つ何か買うかも知れないぜ？」
「ほぉ、それは面白い」
商人は笑っていたが、目の内の光だけは変えてきた。 人を見定める、そのような目だ。
この露店に並んだ商品はどれもこの首飾り程の値段がするものばかりだ。稼ぎの機会があるのなら、拾っておくことに越したことはない。
「そうだなぁ…護衛って風には見えねぇし、芸人仲間とかそういうのか？」
「はっはっ、ハズレだ」
元々当てさせる気がない問いだ、絵に描いたようにクライズクラウは笑う。
口の中で舌打ちをする商人を余所に、クライズクラウはシーリーンの肩を叩いた。
「よし、そろそろ行こうぜリーン」
「はい、クラウ姉さん」
先にクライズクラウが露店を離れ、続いて首飾りを置いたシーリーンが後に続く。
二人の背が小さくなるまで、商人は目を丸くしてその背を追っていた。

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シーリーン（＠たまださん）お借りしました。


細々と小ネタ出しでも…文字でも落書き感覚で書きたいのです。

リーンちゃんがくっついてきてくれると行動指針でありましたので連れてきちゃいました。そしてここぞとばかりにからかうよ、アムシーをからかうにはベストポジションです。（・ｖ・）
この二人はきっと露店をこんな感じで見て歩いてます。ほぼ間違いなく、買わな（ry

余談ですが、クラクラはアムスィさんとアジャルさんのことを黒の旦那と白の坊主と呼んでる気がしてならない。